2011年11月1日火曜日

柳田邦男氏

ノンフィクション作家柳田邦男氏の本は、今までどれだけ読んだことでしょうか。フィクションよりもノンフィクションが好きな私は、柳田氏の守備範囲の広い作品はいつも興味がありました。

私が今まで「けやき便り」で引用した柳田氏の文章も、「介護」「安全」「絵本」と多岐にわたります。ご本人に関して、書きたいことは一杯たまっているのですが、かえってまとまらない状態でした。

多くの分野で、膨大な資料を調べ、それをまとめたノンフィクションを書き続けた柳田氏の温かいまなざしに、いつも教えられていた私です。科学的な考察の中にも、シンクロニシティ(共時性・意味のある偶然)を感じ、こころの内部に深く想いをはせる姿が好きなのです。

事故や災害を記述する時にも、被害者への思いやりを感じます。柳田氏のことばにある「2.5人称」の立場です。当事者や家族としての1人称や2人称。第三者としての3人称。その中間にあるのが「2.5人称」です。客観と主観のバランスが取れた立ち位置です。

先日読み終わった「言葉の力 生きる力」の最後の文章、これが柳田氏の神髄だと思いました。

「私の心には自分の境遇を幸福か不幸かという次元で色分けする概念も意識もない。あるのは、内面の成熟か未熟かという意識だ。そして、内面において様々な未成熟な部分があっても、あせることなく、人生の終点に到達する頃に、少しでも成熟度を増していればよしとしよう」



2010年4月29日 けやき便り: 介護の中で・・・

2010年1月25日 けやき便り: 安全の層

2009年6月6日 けやき便り: 絵本の政治学

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