2012年3月8日木曜日

老いを支えて

母が寝たきりになった頃、「もし今、大きな地震があったら・・・」と考えたことがありました。体の大きい母です。私一人が抱えて避難することは不可能です。誰かに手伝ってもらえたとしても、車が使えなかったら、母を安全な場所に移動させる方法は思いつきませんでした。

2011年3月11日、大きな地震と津波が起こった時、寝たきりの方々は、介護している方々はどうなさったのでしょうか?死者や行方不明の中にも、多くの寝たきりの方々が含まれていることでしょう。

原発事故の後、原子力発電所から4キロしか離れていない病院の様子が先日テレビに出てきました。迎えにきたバスに、一人で動ける人をまず乗せて避難させ、寝たきりの人たちは医師や看護師が付き添って一晩を過ごし、翌日からヘリコプターで搬送したとか。

その晩、患者の一人が亡くなりました。翌日、救援に来た自衛隊の隊員に、看護師さんは言ったそうです。「息はしていません。でも死んでいません」と。どんなことがあっても、まず一番先にこの亡くなった方をここから避難させたい、と必死だったのです。一瞬、驚きの表情を浮かべた担当者、「わかりました」と静かに言って、その方を一番に搬送してくれたそうです。

涙を浮かべながら当時のことを話すこの看護師さん。「みなさんを、もっと早く、もっと遠くへ、運んであげたかった」と。

あの日から全てが大きく変わった被災地では、老いや病を支える医療者・介護者・家族の努力が日々続いています。必要なサービスを十分に受けながら母の介護ができた私にとって、その厳しさは想像に余るものです。

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