2014年5月5日月曜日

「伝える極意」

NHKの番組で目にした同時通訳者の長井鞠子(ながいまりこ)さん著の「伝える極意(ごくい)」をアメリカに持ってきて読みました。日本の同時通訳の先駆けだったサイマル・インターナショナルの設立当初からのメンバーとして、日本の通訳界を引っ張ってきた方です。

会議の同時通訳者として、政治、科学、経済、どんな分野でも仕事をしてきた長井さん。その下調べの入念さは見事です。手書きで必要な表現を英語と日本語を並べて書き綴ったノートは「私の財産」として大切に保管されていました。「手書きだと、自分でどこに何を書いたか、ちゃんと覚えていられるから」という長井さん。コンピューターで打ち込むのとは違って、手を通して表現を体に覚えさせていく作業なのだと思います。

発言者の全てそのままを訳すと意味が不明になるような場面での対応、そこは通訳者の技量が大きく問われるところです。「この人は本当は何が言いたいのだろう」そこまで考えて、瞬時にことばを紡(つむ)いでいくのが同時通訳者。「会議で発言を一番熱心に聞いているのは同時通訳者だと思う」というのはまさにその通りです。

長年の経験から「発言すること」と「伝える」ことの違いを説き、「伝える」ために何が大切かが書かれています。50年に渡る「ことば」との格闘の中から生まれた重みのあるアドバイスは、これからの世界で、日本人が発言を通して「伝える」ためにとても大切な長井さんからの応援メッセージです。

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