2012年6月26日火曜日

母の日記

私の母は毎晩日記をつけていました。書くことが好きだった母にとって、その日の出来事を書いてから寝るのが習慣になっていたようです。

その母が、70歳を過ぎた頃、長年の日記を全て自分の手で処分しました。工場の焼却炉で全て燃してしまいました。若い頃の母が何を考え、どんな生活だったのか、その手がかりは今は何もありません。

今、手元に1997年3月から2000年5月までの母の「最後の日記」が残っています。長年住んでいた家を出て、82歳で私と同居を始めた時から書き出した日記です。94歳で亡くなった母は認知症が進み、まともな会話は全くできなくなっていましたが、日記の中の母は、私が知っている母、そのもののです。

慣れ親しんだ「母の字」が、長年使ってきたボールペンが壊れてから、急に乱れるようになり、内容もまとまらなくなっていきました。「どうなっていくのだろう・・・」という記述が出てくるようになってからあとは、日付も飛び飛びです。あれほど「書く」ことで自分を保ってきた人が、書けなくなっていきました。そして、母は母でなくなっていきました・・・

この「最後の日記」は、私にとっての「老い」の道しるべであるような気がします。 人生の先輩として母が残してくれた日記です。

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