2010年3月24日水曜日

介護と演技

男性介護者と支援者の全国ネットワーク」の発足一周年記念のシンポジウ ムが先日京都で開催されました。ゲストスピーカーは俳優の長門弘之(ながとひろゆき)さん。昨年10月に亡くなった、奥さんの女優の南田洋子さんの介護経 験者です。

介護体験は、限られた時間に話し尽くせるものではないと思います。大きな経験の中で、際限なくあれこれ考え、悩んだはずです。 その長門さんのことば、「彼女が焼き魚を手づかみで食べた時、ボクも同じように食べた。こちらの価値観を押しつけず彼女の世界を理解することが大切だっ た。」という文章がこころに残りました。

お箸を上手に使う母ですが、時には左手が出て手づかみで食べることがあるのです。どうしもそれを否定してしまう私です。今の母に「行儀 悪い」ということばは通じないのは百も承知なのに・・・

3年前、最初の在宅介護をスタートさせたとき、あれこれ本を読みあさり、インター ネットで資料を探し回りました。私自身、とても不安だったのだと思います。その時に、「介護者は役者であれ」ということばに出会いました。認知症の人の世 界を否定するのではなく、その世界でつき合う、つまり演じることが大切とあったのです。長門さんのことばの、「こちらの価値観を押しつけず」です。そし て、これは最高に難しいことです。

長年、俳優として演じてきた長門さんは、それが身に付いているのでしょう。最愛の奥さんの異様にも思え る姿にも対応できたのでしょう。決して簡単では、なかったはずですが、演じることを知っている人だからこそ、可能だったのかなと思うのです。

小学校の「学芸会」は苦手だった私です。虚構の世界に飛び込むのが下手だったのでしょうか。しっかり年齢だけは重ねているのですから、この世は、自分の 考えている通りにはならないことをもっとしっかりわかっているべきですね。まだまだ学びは続きます。

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