「お父様がまだ来ちゃいけない、っておっしゃるの」
90歳の私の祖母(母の母)が寝たきりになってしばらくしてからこう言いました。12月10日前後だったと思います。その時、周りの家族は、祖父が亡くなった18日あたりが旅立ちの日になるのでは、と漠然と考えていました。
大きな病気があったわけではありません。老衰で床についた祖母でした。とても穏やかな日々が続き、そしてみんなの予想どおり、祖母は祖父と同じ日に亡くなりました。
「天国からの“お迎え” 穏やかな看取りとは」というタイトルのNHKクローズアップ現代。看取りがテレビ番組のタイトルとなったことに、少し感慨深いものがありました。
安らかに旅立った人の多くに、両親、友人、ペットなどの「お迎え」があり、それによって、死への恐怖がなくなり、とても穏やかに最期を迎えている、そんな調査を仙台の在宅医療関係者が行いました。その穏やかな死に立ち会った人も、自分の将来迎える死を「怖くない」と感じるようになったとか。
死に直面している人への精神的ケアだけでなく、周りの人の看取りへの不安を取り除くことが大切と考えられる終末期医療。その現場で「お迎え」の効用がはっきりしたのも興味深いことでした。
番組の中で、自宅で曾祖母を見送った小学校の女の子は、おばあちゃんに「ありがとう」ということばをかけ、死後もおばあちゃんは心の中にいる、と答えていました。
私も祖母が今も私の心の中に生きていることを感じています。わが家の子供たちも小学生時代に見送った祖父がいつも見守ってくれていることを知っています。
人間にとって大切な人の死は悲しいけれど、それはみんなに平等に訪れる自然なもの。看取りを体験できた人は旅立つ人から大きな贈り物をもらったことになるのですね。
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