1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災。その2週間後ぐらいだったと思います。友人からの連絡があり、通訳のボランティアができないか、というものでした。アメリカの心理学者たちが被災者のカウンセリングのために日本に来る予定を立てているというのです。
「そりゃ無理だな・・・」と思いました。被災してまだ時間がたっていない状態で、それも通訳を通したカウンセリングは、受ける人にとって辛いだろうな、と思ったのです。結局、その計画はなくなったようです。
カウンセリングは技術を身につけなくてはいけない仕事で、かつ経験が必要です。クライアントの状況を冷静に観察しながら、こころの問題をほぐしていかなければなりません。ですが、マニュアルに沿っただけのカウンセリングであれば、それは決してクライアントのこころに届くことはないはずです。カウンセラーの「思い込み」があったりする場合はなおさらです。
先日の早朝、何気なくラジオのスイッチを入れたら、「被災者の方と一緒に泣いてしまったのです。本当に二人で泣きました。でもそのあと、被災者の方も私も、とても気持ちがすっきりしたのです。初めて本物のカウンセリングをした気持ちになりました」と聞こえてきました。
東京大学社会学部教授の玄田有史(げんだゆうじ)さんでした。希望の社会科学、つまり「希望学」を提唱していらっしゃる方のようです。
寝ぼけていましたから、はっきり覚えているはずはないのですが、なぜか「一緒に泣いた」というところを鮮明に覚えています。被災者の方の苦しみにそっと寄り添った、その姿を思い浮かべることができたからだと思います。これこそがカウンセリングの真髄です。
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