私が最初に使ったコンピューターはマック、マッキントッシュでした。80年代後半のことですから、まだワープロの転換速度の遅かったこと。打ち込んでから、しばらく待つのが当たり前でした。
「本当に何にも知らないんだね」と友人が感心して私に言ったことがあります。コンピューターが何であるか、何もわかっていないのに、書類を作る、チラシを作る、なんてことをやっていた私です。マックならではのシステムが、やりたいことをやらせてくれていたのです。
その後、ウィンドウズに乗り換えたのは、ワードなどの互換性がまだ悪く、翻訳作業にも支障が出てきたからです。ウィンドウズのファイルシステムに慣れるのには、随分苦労したものでした。
アップルの創設者スティーブジョブス氏が亡くなって、彼がいかに完璧主義者であったかということを知りました。自分が求めるものができるまで、どんなに経費や時間がかかっても作り直す、それをスタッフに要求したのだそうです。性能だけでなく、デザインにも大きなこだわりがあり、あるとき、日本の小さな研磨会社に部品の製作を発注し、何度も何度もダメだしをしながら、製品を作らせたとのこと。
大きなこだわりは、単に自己満足のためでなく、ユーザーに最高の商品を提供することで、質の高い「体験」をしてもらう、楽しんでもらうことが目的だったようです。使いやすい、使い勝手がいいという意味の「ユーザーフレンドリー」ということばを初めて使い出し、その概念を文字通り、自社の製品を通じて広げていったのです。発想の豊かさは言うまでもありませんが、人間性にも深さを感じる人です。
「彼こそが、コンピューターを電子計算機から創造のエンジンに変えた」(デザインジャーナリストの藤崎圭一郎さんのことば)
スマートフォンはまだ使っていません。コンピューターもウィンドウズです。でも、いつか、使ってみたい、マックに戻りたい、そう思っている私です。
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