2008年7月17日木曜日

芥川賞

1998年6月の天安門事件の時、「ファックス使わせてください」と中国人留学生が我が家に飛び込んできました。「安心して情報が受けられる場所」として彼は我が家のファックス番号を中国の知人に知らせたようです。

中国の民主化運動が何であるのか、ほとんど知識のなかった私ですが、いつもの笑顔がないその留学生の表情から、事態の深刻さを感じていました。数日間「銭湯に行く時間もなかった」汗くさい彼は、我が家でシャワーを浴びてから、また飛び出して行きました。

この天安門事件を題材にした小説「時が滲(にじ)む朝」が芥川賞を受賞。作者が日本語を母語としない中国出身の人であることが話題になっています。22歳で日本に来た楊逸(ヤンイー)さんはそれから日本語を学び、44歳で芥川賞を受賞。「たった」22年間しか日本語を使っていない人が最高の文学賞を受賞したわけです。

幼い時から触れているからこそわかる言語のニュアンス。おとなになってから外国語を学んだ人には、その部分は欠けているかもしれません。ですが、だからこそ、自分の母語による言語経験がその外国語を新しい形で生かしていけるのかもしれません。

「日本語に新たな息吹(いぶき)」と新聞にありました。どんな文章がつづられているのか、とても楽しみです。

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