「事故や病気によって何らかの器官を失うことは、その人の体に、“進化”にも似た根本的な作り直しを要求します。リハビリと進化は似ているのです。生物は、たとえば歩くために使っていた前脚を飛ぶために作り替えました。同じように、事故や病気で特定の器官を失った人は、残された器官をそれぞれの仕方で作り替えて新たな体で生きる方法を見つけます。前者は何千万年、何億年、後者は数ヶ月や数年とかかる時間はだいぶ違いますが、どちらも同じ、器官から予想もしなかったような能力を取り出しているのです。こうした柔軟な“器官観”が、障害をかかえた人と接する上ではヒントになるではないかと思います」
伊藤亜紗著 「目の見えない人は世界をどう見ているのか」
自走式の車いすを使う仲間との活動の経験から、彼らの「前脚」(腕)の力の強さをいつも感心している私です。自由に動き回るために車いすをいかに楽に操作するか。そのための努力を続けることによって、障がい者スポーツにも対応できる体と心になっていくのです。
「<見えない>ことは欠落ではなく、脳の内部に新しい扉が開かれること」という文章も衝撃的です。
人は何らかの能力を失っても、必ずそれをカバーできる力が出てくるものなのですね。「目からウロコ」の文章が満載された一冊です。
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