ピアノのお稽古をしていた頃、暗譜が大の苦手でした。これは、要するに、練習が十分でなかったから、原因は明確です。今は、それなりに「初見」でも弾きますが(もちろん高級難度のものは無理ですが・・)やはり、暗譜はダメです。
11月、二週間で二回、ピアノコンサートに行きました。二人の演奏者は偶然ですが、楽譜を見ながら演奏するピアニストでした。コンサートピアニストが譜面を見ながら演奏するのを初めて目にしたので、とても新鮮でした。
ロシア出身、現在日本で活動する女性ピアニスト、イリーナ・
メジューエワさんは、中世ヨーロッパのしとやかな女性の雰囲気そのままに、ブラームスとショパンの曲を品よく、かつ情緒豊かに表現していました。会場に中高年男性が多かったのが印象的。リサイタル後のサイン会も「おじさんたち」が一杯並んでいました。
一方、ジャン=マルク・ルイサダさんは、フランスの雰囲気が舞台から伝わってくるような粋な男性。前半のシューベルトのピアノソナタの落ち着いた表現とうってかわって、後半のショパンワルツ「メドレー」12曲(拍手は全てが終わってから)は、曲のつながりを十分に考えた構成でした。譜めくりの女性は、楽譜が行ったり来たりするので、随分大変でしたが・・・
プロのピアニストが譜面を見ながら演奏するのは何となく不思議なのですが、メジューエワさんは、作曲家の意図するところを必ず確認しながらの演奏を心がけているとか。ショパン自身、演奏者が極端な自己表現をするのを嫌ったのだそうです。
曲を暗譜する、というようなレベルは超越した演奏家が、それでも楽譜を見ながら演奏する意味は、素人の演奏とは全く話が違います。ピアノという楽器を通して音楽を表現する、その方法が色々あることがおもしろいなと感じた今月の二つのコンサートでした。