2012年7月27日金曜日

あなただけの靴

ひどい外反母趾(がいはんぼし)や左右の脚の長さの違い、足の大きさの違いから、既製品の靴がはけない人は世の中に沢山いらっしゃるようです。足に合う靴がなければ、歩けなくなり、行動範囲も限定されます。簡単に靴が買える人には想像できない制約があれこれでてくるのでしょう。

神戸の靴職人、中井松幸さんのラジオインタビュー、NHKの「日曜訪問」を聞きました。70年以上、特別注文で、一人一人の悩みをしっかり受け止めながら、考えられるベストの靴を作り続けてきた方です。

阪神淡路大震災で仕事場がつぶれ、もう靴作りはやめようと考えていた時、まだ交通機関が復旧していない中、三重県から、中井さんに靴を作ってほしいと訪ねてきた女性がありました。「中井さんの靴以外では、歩けない」と言われ、工具をかき集め、再度靴を作っていこうと決心したとか。

両足の踵(かかと)しかない男性から、「ズボンの裾(すそ)から、靴の先がちゃんと見える靴が欲しい」という注文がありました。もちろん、しっかり歩ける靴でなければなりません。工夫に工夫を重ねることで、この男性が感激する「普通に見える靴」ができあがったそうです。

ガンで余命数ヶ月と宣告された以前のお客さんから、新しい靴の注文があり、「あっちへはいていく靴は中井さんの靴でなければ」と言われたとか。

「丁寧に作った靴は丁寧な靴になる」という中井さんのことば。縫い目の位置も細かく考え抜いて作られた靴、それを履いて歩けるようになった人たち。本物の職人の意気込みを感じたインタビューでした。


中井松幸さんのHP:http://www.kutunonakai.com/


0 件のコメント: