2009年12月14日月曜日

声・ことば

京都ライトハウスの「朗読ボランティア養成講座」で勉強していた時のことです。定員の2倍近い40人ほどのクラスにただ一人、定年後の男性がいらっしゃったのです。

視 覚障害者のための、朗読ボランティアがまず学ぶべきことは「標準語」のアクセントです。関西弁との違いをしっかり理解して、通りのいい声が必要になりま す。ほとんどの人にとって、日本語の話し方を勉強するのは初めてのこと。講師の発音やアクセントの違いが聞き分けられなくて四苦八苦する人が続出のクラス でした。

この唯一の男性も、アクセントが違うといつも注意され、声が伸びていない、それでは朗読にならない、と手厳しい指摘を受けていました。

ところが・・・

忘年会の席で、この男性が朗々とした声で詩吟(しぎん)を披露されたのですから、仲間一同ただただ唖然(あぜん)!講師の先生も、その素晴らしい声に感嘆していらっしゃたほどでした。

あの素晴らしい声が、なぜ朗読の時に出ないのか・・・本当に不思議でした。しっかりした腹式呼吸ができているこの男性の、「張りのない」朗読の声は一体何なんだろう、私にとって大きな疑問でした。

声を出して本を読む。この単純とも言える作業も、しっかりした声で、表情豊かに表現するには、息の使い方の訓練が必要です。単に大きな声が出るだけとは違う、しっかりした技術を身につけなければなりません。

日本の教育では、日本語を正しく話すための訓練はまずありません。speechのクラスで小さい時から鍛えられるアメリカとは随分違います。自分自身がどんな声で、どんな音調で話しているのか、まずそれを聞き分ける耳が必要です。

聞いてくれる人に正しく、そして暖かく届く「いい声」にあこがれます。単なる美声ではなく、こころがしっかり伝えられる声で話したいと思います。自分の話すことば、そしてその元となる声を大切にしたいものです。

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