2014年5月14日水曜日

「死の壁」

「死の壁」とタイトルをつけると、ちょっと自分自身が身構えてしまいそうですが・・・

「町医者だから言いたい!」の長尾和宏医師のブログにあったことばです。

   旅立ちの半日から一日前には多くの人が、身もだえます。
   私はそれを「死の壁」と勝手に呼んでいます。
   ここを待てるかどうかが、在宅看取りの山場であると。

私の母の場合、亡くなった前日、日曜日の朝あたりからゼイゼイと痰(たん)が絡(から)まる音が出てきました。本人はそれほどしんどそうではありませんでしたが、見ているこちらが気になって、訪問看護師さんに連絡。日曜日にもかかわらず、自宅で使える吸引機をさっそく手配して届けてくださったのです。

使い方を教えてもらって痰を引くと、呼吸がとても穏やかになります。父が長年、呼吸器のトラブルを抱えていましたから、昔から吸引機の使い方は間近に見ていた私です。やってみるとけっこううまく痰が引けるのです。

夕方、夜、そして夜中、何回か吸引をしました。

そして、その朝、母はヨーグルトを少し口にしたあと、急にすごい発汗をして、そのまま旅立ちました。苦しむ様子は全くありませんでした。

長尾医師のおっしゃる「死の壁」は母の場合は痰がからみだしたあの状態だったのかもしれません。介護する家族にとって「その時」を見守るのはなかなか大変です。私は吸引という「作業」を通して、その時を通りすぎることができました。もっとも、そんなに急に旅立ちの時を迎えるとは、夢にも思っていませんでしたが。

無事に、とても平穏に母を見送れた、この感覚は、今の私の大きな心の支えとなっています。そしてこれは母から私への最高の贈り物だったような気がしています。

http://apital.asahi.com/article/nagao/2014050300003.html



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