テレビがなかった時代、ラジオから流れてくる音楽は音だけで聞く人の耳に届いていたはずです。現代、テレビで放映されるコンサート番組は、色んな楽器の奏者を、曲の進行に合わせて写し出しています。耳だけでなく、目で音楽を楽しむ時代になったのです。
ウィーンフィルのコンサートマスターを44年も勤めたライナー・キュッヘル氏のことばのなかに、「最近の演奏会に足を運んでくれる人たちの多くは聴衆ではなく観衆になっているようで残念です。昔のみなさんの方がよく聴いていた」というものがありました。
「チラシやパンフレットの写真も昔に比べると華やかな、動きのあるものになり、見た目のインパクトが重要視されている。音には何の関係のないことなのに」とキュッヘル氏のコメントが続きます。
単に昔のほうがよかった、というのではないでしょうが、音楽を伝える方法が変わってきたことに対しての戸惑いがあるのでしょうね。ご本人がそれだけ音楽を伝える努力を続けてこられたからこそだと思えるのです。
華やかなコンサートホールのコンサートは確かにすばらしいです。でも小さなホールで、演奏者の息づかいまで感じられる演奏会もとってもいいものです。音楽とは「音を楽しむ」ことなんですもの、もっと音に耳を傾けて、すてきな音楽に出会いたいと思います。
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