2011年1月11日火曜日

夜間中学校

母がいなくなってからしばらく、夜中に目があく「後遺症」らしきものがありました。母の最後の晩、2時過ぎに吸引して、それから寝にくくなって以来、同じようなリズムになってしまったのです。

その頃のNHKラジオの「深夜便」でした。4時からの「明日へのことば」という時間に、夜間中学校の先生が話していらっしゃいました。

夜間中学に通うのは、それぞれの理由で教育が受けられなかった人たち。昔は在日の人も多く、ひらがなから始めたとのことでした。

初めてひらがなを覚えた人の一人がこう言ったそうです。「日本語ってすごいね。最初が『あい』で始まるんだね」。「あいうえお」の最初の音が「愛」である日本語ってすばらしい、その人はそう思ったのです。

漢字を勉強するのは、もっと大変だったとか。「父」と「母」を練習していたある日。「父はすごく簡単だね。カタカナの「ハ」に「バッテン」つければいいんだから」。バッテン、つまりペケですよね。確かにそうです。「母の漢字は難しい。「ハ」に「マル」にしておけばいいのに!それに点が二つもあるの邪魔だ」。

そこで先生が説明します。「これはお母さんのおっぱいなんだから、取ってはいけない点ですよ」。

そうすると、ある人が、「この点はおっぱいじゃないよ。あれはお母さんの涙だよ」。

教室は一瞬シーン、と静まりかえったそうです。

こんなエピソードをメモも取らずに覚えているのは、この先生の語り口が素晴らしかったのと、内容がおもしろかったからです。明け方の本当はとても眠い時間なのですけれどね。

睡眠が不規則になったのはちょっと辛かったけれど、こころが暖かくなるお話を耳にすることができました。そして、今は朝までぐっすり眠ることができるようになりました。

0 件のコメント: