胃瘻は「いろう」と読みます。口から食事が取れなくなった人の胃壁に穴を開け、外部から直接栄養補給する方法のことです。
健康な人にとっ て、口から食物を食べるのはあまりにも当たり前のこと。それが色々な原因でできなくなった場合、栄養を摂取するために、最近は簡単にこの「胃瘻」が取り付 けられることになるのです。
特別養護老人ホームの常勤医師の著作を読みました。お年寄りは、食べる際に、気管の入り口にある蓋 (ふた:口頭蓋こうとうがい)がうまく閉まらず、食べ物が気管に入ってしまう危険性が高くなります。誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を生じやすくなるの です。
ホームの住人が、誤嚥性肺炎になると、病院に運ばれます。肺炎そのものの治療が終わっても、嚥下障害(えんげしょうがい)が残って いる人に、点滴での栄養補給を続けて、いつまでも入院させるのは不可能です。
そこで胃瘻をつけようということになるのです。高齢者の多く は自身が認知症ですから、「そんなことはしてほしくない」という意思表示はできません。家族にとって、胃瘻が唯一の栄養補給方法だと言われれば、それを断 るのは難しいはずです。そして、胃瘻を装着した人がホームに戻ってくることになるのです。
せっかくの栄養補給方法である胃瘻ですが、寝た きりの人は胃の内容が逆流して気管に入り、誤嚥性肺炎になってしまうことが多いのです。誤嚥性肺炎を起こさないために作った胃瘻が誤嚥性肺炎の原因とな る・・・何とも矛盾した結果を招くのです。
この本の著者、石飛幸三医師は、この管理された栄養補給の矛盾点を鋭く突き、延命治療の限界も 指摘します。医療技術が進歩していく中で、患者の人間性が奪われる医療が現実に蔓延(まんえん)している、その現状に警鐘(けいしょう)を鳴らします。生きるための処置 が原因で死を迎える、その矛盾を明らかにします。
母は不思議なほど、飲み込み、つまり嚥下が上手です。ベッドに横になった状態で、頭をあ まり高くしなくても、ちゃんと飲み込めるのです。往診の先生や看護師さんから、「絶対に頭を高くしてから飲み物をあげてください」と強く言われている私で すが、時々はさぼってそのまま「吸い口」からお茶を飲んでもらっています。
量は少ないのですが、口からちゃんと食事をする母です。 もぐもぐすることに疲れて途中で目が閉じてしまうこともありますが、食べる意思はしっかりしています。
胃瘻の問題を読んだ私に とって、この母の状態がいかにありがたいことなのかを再確認しました。自分で食べられる、生きるためにはそれが基本なのです。母の状況に改めて感謝です。
PS:今日のブログの「黒い」こと。難しい漢字が多いからですね。舌をかみそうなことばをたくさん勉強しました。
PEG - 胃瘻による栄養療法
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