月曜日、ポストから朝日新聞を取り出して目に入った一面の記事、ショックでした。天野祐吉さんが亡くなったというのです。おとといの日曜日、書評欄「ニュースの本棚」に「1964年に売れた本」というタイトルで天野さんの文章が大きく掲載されていたのですもの・・・
つい先日、天野祐吉さんの洒脱(しゃだつ)なコラムがすてきだね、と友人と話していたところでした。世の中の動きを決して正面から批判するのではなく、なんとなくユーモアに包んだ文章で評し、「こうだったらいいね」というような雰囲気で、いつもコラムが締めくくられていました。どんな時にも、日本人が本来持っている「はず」の素晴らしさを感じさせてくださる文章でした。
「1964年に売れた本」では、東京オリンピックを契機として、それまでの「日本」が、その後の「ニッポン」へ大きく変わっていった様子が、1964年に売れた本の解説を通して書かれていました。
ベストセラーのトップだった「愛と死を見つめて」の、400通を超える著者二人の手紙の文章に触れ、そこに綴(つづ)られている日本語の美しさが語られます。
「いま、こういう日本語を書ける若者が何人いるだろう。世の中が変わるということは、実は“言葉”が変わるということであるんだろう」と天野さんは記します。
CM批評という雑誌を出していらした天野さん。言葉の大切さとともに、言葉が持つ力を本当に信じていらした方だったと思います。
今朝の「天声人語」には「天野さんを失った“あまロス”を嘆く読者は少なくないだろう」とあります。
天野祐吉さん、色々教えてくださってありがとうございました。